デサントスポーツ科学
Online ISSN : 2758-4429
Print ISSN : 0285-5739
研究論文
毛髪コルチゾール濃度測定が オーバートレーニングを予防する生理指標となりうるか
越智 元太征矢 英昭弘山 勉岡本 正洋諏訪部 和也
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2020 年 41 巻 p. 295-304

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抄録

アスリートに見られるオーバートレーニング症候群 (OTS) は過剰なトレーニングやコンディション不良といった慢性的なストレスが主な要因とされ,長期に渡りパフォーマンスや気分の低下を引き起こす.これまで,慢性ストレスの生理的な評価法は困難とされてきたが,近年,毛髪コルチゾール濃度 (hair cortisol concentrations; HCC) が慢性ストレスを評価する有用な指標として台頭してきた.そこで,本研究では,HCCがOTSを評価する生理指標として有用か検証するため,HCCが運動持久性や気分と関連するか明らかにすることを目的とした.2018年6月と7月にスポーツ競技経験を有する健常な男子大学生41名 (年齢19.7±1.5歳,身長171.7±5.2cm,体重58.2±5.3kg) のHCCと最高酸素摂取量 (27名),酸素運搬能の指標である血中赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット,気分の指標であるPOMS2を測定した.その結果,6月7月のHCCは血中赤血球数と負の相関関係が示された.さらに,7月のHCCはPOMS2の活気・活力と負の相関関係が示された.以上の結果から,HCCは血液酸素運搬能や気分と関係することが明らかとなり,過剰な慢性ストレスは運動持久性低下に関連する可能性が示唆された.今後,HCC測定を継続して行うことで,慢性ストレスの増加が長期的に運動パフォーマンスや気分の低下と関連することが明らかとなれば,HCCはOTSの判断基準として有用であることを示されることが期待される.

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© 2020 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
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