筋線維の一部が断裂するという肉離れは,伸張性収縮によってあまり引き伸ばされていないサルコメアと過度に引き伸ばされたサルコメアが混在するようになるという sarcomere length nonuniformityと関連している可能性がある.しかしながらこの sarcomere length nonuniformityは実験的に観察されているわけではない.そこで本研究では,実際にサルコメア長を可視化することで,sarcomere length nonuniformityが実際に生じるかどうかを確認した.単一の筋線維を対象に,サルコメア長が不均一になると言われている伸張性収縮を行い,その後の等尺性収縮中の局面のサルコメア長の分布を,純粋な等尺性収縮中のサルコメア長の分布と比較した.その結果,従来のセオリーに反し,サルコメア長の分布は条件間で違いはみられなかった.この結果は,従来は考えられていなかった何かの機構が,サルコメア長を安定させていることを示唆している.結果的に, sarcomere length nonuniformityは,局所的に生じる肉離れを説明できないと考えられる.