2022 年 43 巻 p. 71-79
定期的な運動は,ミトコンドリアの品質を向上することで筋量の維持に貢献する.ミトコンドリアの品質は,不要なミトコンドリアを分解するマイトファジーを活性化することで維持することができる.オートファジー基質として知られている p62/SQSTM1は,リン酸化することでユビキチン化した不要なミトコンドリアを認識し,オートファゴソームに移行させ分解するが,運動による骨格筋のマイトファジーの活性化に対する p62の役割について詳細に検討した報告は無い.そこで本研究では,運動によるマイトファジーの活性化に対する p62やリン酸化 p62の役割の解明を目的とした.実験には,運動を負荷した筋特異的な p62欠損マウスと野生型同腹子マウスの骨格筋,筋特異的な p62発現増強マウスと野生型同腹子マウスの骨格筋を使用し,マイトファジーに関連する複数のタンパクの発現とミトコンドリアの量に関連するタンパクの発現を評価した.その結果,運動は p62のリン酸化を誘導したが,筋特異的 p62欠損マウスでは運動によるマイトファジーの活性化に影響は及ぼさなかった.また,筋特異的 p62発現増強マウスは複数のマイトファジー関連因子の発現が有意に変動した.これらの結果は,骨格筋の p62はマイトファジーを制御するが,運動によるマイトファジーの活性化には関与しない可能性を示唆している.