前十字靭帯( ACL)損傷による神経制御異常が,着地動作における予測外事象発生時に筋のフィードフォワード( FF)制御にどのような影響を与えるかは不明である.本研究では膝蓋腱部振動刺激にて ACL損傷における神経制御異常モデルを健常被験者にて作成した.この異常モデルを用いることにより,実際の患者を用いた実験では実現することができない ACL損傷による神経異常発生前後の変化を比較することができる.そして, FF制御の再構築時の実験条件を均一化できる Surprise Landing課題を被験者に課することにより,神経制御異常の誘発前後での着地前筋活動の変化を調査した.その結果,神経制御異常の誘発にて,偽板通過後における前半部分の筋活動で内側広筋,大腿直筋が有意に大きくなった(p=0.014,0.04).後半部分ではすべての筋で有意差は見られなかった.これらの結果から ACL 損傷で発生する皮質脊髄路興奮性変化によって, 予測外事象の FF制御では一部の筋の脊髄反射経 路にて補完的に活動が高まると推測された.