運動は白色脂肪組織の量的・機能的適応を惹起するが,詳細な分子機序は明らかでない.骨格筋AMPキナーゼ (AMPK) は脂肪酸利用の制御やマイオカインの発現を介して,運動による白色脂肪組織の適応に寄与している可能性がある.以上より,本研究では骨格筋AMPKが,運動による抗肥満効果ならびに白色脂肪組織の分子適応に寄与する可能性を検討することを目的とした.骨格筋特異的AMPKα1ドミナントネガティブ変異体過剰発現 (AMPK-DN) マウスならびに野生型マウスを,自発性走運動群ならびに非運動群にわけて,介入を実施した.4週間の介入期間終了後,体重を測定し,精巣上体白色脂肪組織をサンプリングした.AMPK-DNマウスでは,運動に伴う白色脂肪組織重量の減少ならびに脂肪分解関連分子の発現増加が部分的に減弱していた.一方,運動によるトリアシルグリセロール合成関連分子ならびにミトコンドリアマーカーの増加は,野生型およびAMPK-DNマウスにて同程度であった.以上より,骨格筋AMPKは運動による白色脂肪組織の量的・機能的適応に寄与していることが示唆される.