デサントスポーツ科学
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Print ISSN : 0285-5739
研究論文
マスク着用が運動時の呼吸筋活動,呼吸循環応答および有酸素能力に及ぼす影響
小川 剛司
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2023 年 44 巻 p. 192-200

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抄録

本研究は,マスク着用が運動時の呼吸代謝応答および運動能力に及ぼす影響を調べることを目的とした.9名の健康男子大学生が実験に参加した.実験は,布マスクを着用(FM)およびマスクなし(CON)の条件において,トレッドミル走による漸増負荷運動を疲労困憊まで行った.運動中,呼気ガス代謝分析器を用いて,換気量(VE)および最大酸素摂取量(VO2max)を測定した.最大VEはFMでCONよりも有意に低値を示す一方で(p<0.05),口腔内圧はFMで有意に高値を示した(p<0.05)ことから,マスク着用による最大VEの低下は呼吸抵抗の増加によって生じることが示唆された.運動継続時間はFMでCONよりも低値を示す傾向にあった(p=0.07),運動能力が低下する可能性が示唆された.一方で,VO2maxにはマスクありなしで有意な差は見られなかった.布製マスクは,呼吸抵抗が低いながらも換気量を低下させ,運動能力を低下させる傾向にあるものの,有酸素能力には影響しないことが示唆された.

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© 2023 公益財団法人 石本記念デサントスポーツ科学振興財団
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