本研究では,重ね着を用いた3日間連続での持久性トレーニングが,暑熱環境下での運動時の体温調節能に及ぼす影響を検討することを目的とした. 男性陸上競技長距離選手9名を対象に,室温15℃環境で90分間のペダリング運動を3日間連続で実施した.この際,重ね着を用いて暑熱ストレスを課す条件 (着衣条件) と軽装 (半袖・短パン) を着用する条件 (通常条件) を設けた.3日間のトレーニング期間前後で,暑熱環境 (室温35℃) で40分間のペダリング運動を実施し (暑熱耐性テスト),運動時の体温調節能を評価した. トレーニング時の発汗量は,着衣群が通常群に比較して有意に高値を示した (P<0.05).トレーニング期間前後での深部温や血漿量の変化,暑熱耐性テスト時の発汗量や汗中ナトリウム濃度の変化には,いずれも条件間での有意差がみられなかった. 以上の結果から,重ね着を用いた3日間連続での持久性トレーニングによって,暑熱環境での運動時の体温調節能の改善は認められなかった.