芸術工学会誌
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ポップアップ多面体を活用した幼児用遊具の教育的有効性(プロダクトデザイン)
織田 芳人
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2010 年 54 巻 p. 99-106

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抄録

本研究は、1回の操作で立体化・折り畳みが完了するポップアップ多面体を活用して、幼児が手に取って形体の変化・動きを体験できるような小型知育遊具、及び、幼児が内部に入って空間感を体験できるような開口部を設けた省収納スペースの大型知育遊具を開発することを目的としている。本論文では、開発しようとする遊具が知育遊具であるという観点から、改良した小型及び大型遊具のデザイン検討モデルIIを幼児たちに操作してもらい、その過程で、ポップアップ多面体の立体模型と半折図形の照合実験、さらに新たに、筆記による図形選択試験を行うことによって、デザイン検討モデルIIの教育的有効性を考察する。まず、正四面体、正六面体、正八面体及び正三角柱のポップアップ多面体4種類を用いて、小型及び大型遊具のより実用的なデザイン検討モデルIIを制作した。次に、そのデザイン検討モデルIIを幼児たちに操作してもらう過程で、上記ポップアップ多面体4種類の半折図形と立体模型の照合実験を行った。 さらに、筆記による図形選択試験として、上記ポップアップ多面体4種類の半折図形を利用した平面図形に関する問題、及び、斜投影図法で表示した立体図形に関する問題を作成して、幼児たちにデザイン検討モデルIIを操作してもらう過程で、それぞれ解答してもらった。以上、デザイン検討モデルHに関する実験から、(1)正四面体、正三角柱、正六面体及び正八面体のポップアップ多面体4種類の立体模型と半折図形の照合実験を、小型モデルII操作後と大型モデルII操作後に行った結果、平均の照合正解率が上昇した、(2)筆記による上記ポップアップ多面体の半折図形選択試験を、小型モデルII操作の前後、または、小型モデルII操作前と小型及び大型モデルII操作後に行った結果、それぞれで正解率が上昇し、検定で有意差が認められた事例も見出された、(3)筆記による立体図形選択試験を、小型モデルII操作の前後、または、小型モデルII操作後と小型及び大型モデルII操作後に行った結果、それぞれで正解率が上昇し、ともに検定で有意差が認められた、(4)したがって、幼児にとって、本研究のデザイン検討モデルIIを操作する活動には、幾何学形体の認知を促す点で教育的有効性があると考えられる、という結果が得られた。

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© 2010 芸術工学会
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