芸術工学会誌
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芸術工学会誌71号
ニューアーバニズム理論の実践手法としての 統合型フォーム・ベースド・コードの特徴に関する研究
佐々木 宏幸
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2016 年 71 巻 p. 90-97

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抄録

統合型フォーム・ベースド・コード(以下統合型FBC)は、一般的なFBCやFBCのモデル開発規定であるSmartCodeをもとに、それらの課題の改善を目指し、Freedman Tung + Sasakiが策定する都市計画文書の呼称である。 本研究の目的は、統合型FBCの代表事例である米国ワシントン州ボッセル市「ダウンタウンサブエリアプランと開発規定」(以下DSPR)の分析を通し、統合型FBCの位置づけ、構成、策定項目、策定プロセスの特徴を明らかにすることである。 本研究では、①DSPRの位置づけと構成の明確化、②DSPRの策定項目と一般的なFBCやSmartCodeの策定項目との比較、③DSPRの策定プロセスの明確化と分析を通して、以下の統合型FBCの特徴を明らかにした。 ① 市の総合計画、ゾーニング規定の一部として都市計画体系の中に明快に位置づけられている。 ② 開発規定は、一般的なFBCやSmartCodeの開発規定の内容を踏襲し、望ましい公共空間の創造に主眼を置くNU理論に基づいている。 ③ ビジョン・活性化戦略・市行動計画・開発規定を一体的に策定・集成し、それらの相互関係を明確化している。この点は、開発規定に主眼を置く一般的なFBCやSmartCodeと異なる特性である。 ④ 策定プロセスでは、ビジョンと実現施策を立案する段階が、後続の開発規定策定の方向性を共有する段階として肝要であり、開発規定の策定作業は、専門技能としてコンサルタントに委ねられている。 ⑤ 参加型プロセスで策定され、市議会議員、都市計画委員、コアチームメンバー、市民等の参加者に、個々の立場に応じた明快な役割が与えられている。 最後に上記の特徴をもとに、統合型FBCの手法は、参加型策定プロセスを通してコミュニティのビジョンと実現施策を立案・共有すること、さらに施行後は、コミュニティの将来像実現のための能動的・戦略的・協調的な官民一体の取り組みを主導する文書として機能することを目指していると結論付けた。

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