芸術工学会誌
Online ISSN : 2433-281X
Print ISSN : 1342-3061
71 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
芸術工学会誌71号
  • 森崎 巧一, 大海 悠太, 高木 亜有子, 小楠 竜也
    2016 年 71 巻 p. 66-73
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー
    近年、芸術やデザインなどを対象に、人の感性情報を定量的に調査し分析する研究が増えている。感性情報を探るための代表的な方法の一つに印象評価があるが、統計解析の知識と経験が少なからず要求されるため、初学者にとって必ずしも容易ではない。  そこで本研究は、デザイン教育における印象評価への取り組みを容易にするため、これを支援する「印象評価サポートツール」の開発を行った。まず、一般に広く普及しているMicrosoft Excel のマクロ作成用言語(VBA)を用いて「印象評価サポートツール(Excel 版)」を制作した。本ツールは、ユーザの作業進行を助ける「ガイドツール」、アンケート作成作業を助ける「アンケートツール」、多変量解析による分析作業を助ける「分析ツール」によって構成される。次に、Excel VBA を利用できない人のために、サーバーサイドJava によって同様の機能をWeb 上で実現する「印象評価サポートツール(Web 版)」を制作した。ユーザは、以上のツールを用いることにより、作品の印象特徴の解析や作品同士の類似性の分析など、デザイン解析においてより本質的な課題の方に力を注ぐことが可能となる。  本ツールは、3 名の教員により実際の教育現場の中で活用された。そしてデザイン教育において、印象評価の初学者でも本ツールが活用可能であることが確認され、作品に対する客観評価の指導においても有効性が認められた。
  • 髪を用いた作品を対象とした両義的なイメージに着目して
    鶴巻 史子
    2016 年 71 巻 p. 74-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究は、「グロカワイイ」や「キモカワイイ」のようなネガティブなイメージをプラスに転換し、ポジティブなイメージに捉え直そうとする美的感性に着目した。両義的なイメージを包含する感性である「両義的感性イメージ」において、ネガティブなイメージをポジティブなイメージに転換させる基本概念と、その契機を明らかにすることが目的である。  印象調査1_では、「両義的感性イメージ」の変化要因である「現実感」「非現実感」と、その印象「肯定的」「否定的」との関係について検証を行った。2014年12月から約2ヶ月間、20代〜40代までの黒髪の男性15名、女性15名、計30名を対象に、髪を表現要素に用いた作品125例に関する印象調査を実施した。  調査の結果、変化要因の項目数とその印象の関係において、125例中99例が整合していたが、26例が不整合であった。不整合であった26例から特徴的な3つのパターンを見出した。このパターンから、ネガティブなイメージをポジティブなイメージへと転換させる基本概念として、「現実感」「非現実感」「身体性」を見出した。  印象調査2では、印象調査1で不整合であった26例と、整合していたが、回答差が1名であった4例の合計30例を調査対象とし、ネガティブなイメージがポジティブなイメージに転換する契機について明らかにした。2015年1月から約2ヶ月間、20代〜50代までの男性26名、女性54名、計80名を対象に、髪を表現要素に用いた作品に関する印象調査を実施した。  調査の結果、回答理由で最も多かったのは「不気味」であった。次いで「気持ち悪い」であり、ネガティブな回答理由が多くあげられた。次に多かったのは、「怖い」「人毛っぽい」「クリエイティブ」であり、ここで初めて「クリエイティブ」というポジティブな回答理由があった。「クリエイティブ」の回答以降、ポジティブな回答理由が続いた。これらの結果から、「クリエイティブ」という認識が、ネガティブなイメージをポジティブなイメージへ転換するひとつの契機であると考えることができる。
  • ブラウン 裕子, 佐藤 優
    2016 年 71 巻 p. 82-89
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー
    本研究では、主にインターネットを介して流行した動画を用いて、知名度に有意に相関する感情や動き、特定の感情と有意に相関する動きの種類を明らかにする前調査を始めに行った。更に、視聴者が移動中に動画中心のコンテンツを視聴している現代の傾向を考慮し、注視点領域に動画コンテンツを提示し、周辺領域に動画刺激を提示した場合に、感情評価や動きの印象がどう変化するのか、また知名度と有意に相関する感情を最も想起させる注視点領域と周辺領域の動画の組み合わせがあるのかどうかを実験を行い明らかにした。
  • 佐々木 宏幸
    2016 年 71 巻 p. 90-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー
    統合型フォーム・ベースド・コード(以下統合型FBC)は、一般的なFBCやFBCのモデル開発規定であるSmartCodeをもとに、それらの課題の改善を目指し、Freedman Tung + Sasakiが策定する都市計画文書の呼称である。 本研究の目的は、統合型FBCの代表事例である米国ワシントン州ボッセル市「ダウンタウンサブエリアプランと開発規定」(以下DSPR)の分析を通し、統合型FBCの位置づけ、構成、策定項目、策定プロセスの特徴を明らかにすることである。 本研究では、①DSPRの位置づけと構成の明確化、②DSPRの策定項目と一般的なFBCやSmartCodeの策定項目との比較、③DSPRの策定プロセスの明確化と分析を通して、以下の統合型FBCの特徴を明らかにした。 ① 市の総合計画、ゾーニング規定の一部として都市計画体系の中に明快に位置づけられている。 ② 開発規定は、一般的なFBCやSmartCodeの開発規定の内容を踏襲し、望ましい公共空間の創造に主眼を置くNU理論に基づいている。 ③ ビジョン・活性化戦略・市行動計画・開発規定を一体的に策定・集成し、それらの相互関係を明確化している。この点は、開発規定に主眼を置く一般的なFBCやSmartCodeと異なる特性である。 ④ 策定プロセスでは、ビジョンと実現施策を立案する段階が、後続の開発規定策定の方向性を共有する段階として肝要であり、開発規定の策定作業は、専門技能としてコンサルタントに委ねられている。 ⑤ 参加型プロセスで策定され、市議会議員、都市計画委員、コアチームメンバー、市民等の参加者に、個々の立場に応じた明快な役割が与えられている。 最後に上記の特徴をもとに、統合型FBCの手法は、参加型策定プロセスを通してコミュニティのビジョンと実現施策を立案・共有すること、さらに施行後は、コミュニティの将来像実現のための能動的・戦略的・協調的な官民一体の取り組みを主導する文書として機能することを目指していると結論付けた。
  • 形態的特徴、距離、配置及び明度差について
    木下 武志, 福田 弓恵, 菅原 阿久里
    2016 年 71 巻 p. 98-104
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー
    ディスプレイ上に視覚コンテンツの構成要素をレイアウトする場合、視覚的なバランスを良くするためにスペーシングやアイソレーションの設定等が行われている。これらの視覚調整は、構成要素の相互関係によって生じる緊張感である「シュパヌンク」が関連すると考えられる。本研究では、視覚調整の要因であると考えられる心理物理的な力を空間力と記述する。  平面図形の外部に生じる空間力の実験的な検討として、我々の先行研究では空間力を視覚的圧力と捉え、2つの刺激図形を並置して一方の図形から他方の図形の輪郭上の点に対する視覚心理的圧力の強さを評価した報告がある。実験結果により、これに関する次の傾向が示された。1)三角形は正円と正方形よりも強く、また対向する頂点の内角が小さい三角形ほど強い。2)図形間の距離が短いほど強い。3)配置は強さに影響しない。しかし、上下の配置の場合は、左右の配置の場合より強いという可能性が示された。  本研究では、先行研究と同様な研究方法に基づき、視覚的圧力の強さを評価する位置を変更し、並置した2つの図形間の中間点の視覚的圧力を対象とした。また、検討する要因を増やし、図形の明度差による視覚的圧力の差と、評価の段階をより詳細に調べるために無段階評価に変更した。結果として、図形間の距離が短いほど強く、また、正三角形は正円と正方形よりも強いという結果は、先行研究と一致した。しかし、図形間の中間点の視覚的圧力の強さを評価したことで、三角形と正円では先行研究と一致したが、正方形では強くなった。また、明度が低いほど視覚的圧力は強い等の傾向が示唆された。
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