2014 年 30 巻 p. 147-156
新潟県東蒲原郡阿賀町の津川地域に分布する海成上部中新統の野村層からMesodictyon 属の1新種Mesodictyon japonicum を記載した。本種は胞紋の内側に多孔師板があること,殻面に有基突起がな いこと,そして殻套に1個の唇状突起が存在 するという形質を持つ。これらの形質はMesodictyon 属の主要な形質である。しかし,本種は殻套有基突起が3個の付随孔を持つこと,また胞紋の外側縁に肉趾状師板の 基部に類似した小さな突起を持つことで,これまでに知られているMesodictyon属の他の種とは区別される。本種は後期中新世において 限定された生存期間を持つ。すなわち,本種は860万前頃に出現し,820万年前に増加して,550万年前頃には絶滅した。ただし,それ以新の堆積物にも本種が産することがあるが,これは再堆積である可能性が高い。この珪藻 は現在のところ海成層からのみ見つかっているが,海成層中で共産する淡水生のAulacoseira属珪藻と産出パターンが共通であることから,淡水生珪藻であると推察される。