抄録
白内障の治療のためには水晶体を眼内レンズに置換する治療が用いられる。なかでも多焦点眼内レンズは複数のピントが合う位置があるため、患者の QOL の向上が期待できる。一方、多焦点眼内レンズ患者においては、ハロー・グレア・スターバースト現象と呼ばれる、夜間など暗所での光に対する見え方の不具合が生ずることがある。具体的には、光がにじんで光点の周りに広がり、光点周囲にリング状の靄がかかるように見える「ハロー現象」、光がぎらつくなどしてまぶしく見える「グレア現象」、光点から放射状に伸びる光の線が見える「スターバースト現象」などがある。これらの現象はよく知られているが、眼内レンズ装着者の主観的な視覚によって観察されるものであり、客観的な議論には限界がある。われわれは、3DCG のポストプロセスによってこれら現象を VR 空間で再現する研究を進めている。最終的には、それぞれの眼内レンズ装着者が感じているハロー・グレア・スターバースト現象と一致するポストプロセッシングを患者毎に行って現象の客観評価を目指している。今回は、ハロー・グレア・スターバースト現象を再現可能なポストプロセッシングについて報告し、ゲーム関係技術の医療応用におけるゲーミフィケーション・シリアスゲームに関して考察する。