抄録
研究不正に対して様々な取り組みが行われた結果、大学における研究倫理教育の実施体制は整備され、一定の成果を上げている。しかし、その目線を大学から企業へ移すと、R&D 従事者に向けた倫理教育の実施有無は各企業に委ねられており、内容が充実しているとは断言できない。近年のコンプライアンスに欠ける企業の炎上事例や責任ある研究・イノベーションの推進を考慮すると、実務者への倫理教育の必要性は高いといえる。そこで、本研究では、研究倫理教材『QRP GAME』をインストラクショナルデザインに基づいて改善し、そのR&D 版を開発した。大手企業7 社による労働組合イベントの参加者36 名を対象に、研修形式の実践を行った結果、実務における倫理の重要性や不正に対する組織間の認識の違いについて、各自が考える良い機会となり得る可能性が示された。