抄録
ヒマラヤ南麓に位置するブータン王国を対象に、同国のモバイルゲーム文化がどのように育まれてきたのか、そしてそれが同国のメディア・インフラストラクチャーにどのように支えられているのか、論じていく。筆者はこれまで、ブータンの情報化、主に携帯電話の普及が同国社会にどのような影響を与えてきたのか研究してきており、近年は、そのなかでもモバイルゲームが急速に浸透している状況に注目している。本論ではまず、携帯電話普及の歴史を概観し、それがどのようにモバイルゲームの流行へ繋がってきたのか詳述する。続いて、メディア・インフラストラクチャー論を援用し、通信を支える自動車道路と送電網の成り立ち、それらの基層を成す自然を含めた層序構造について言及する。最後に、ブータンのインフラ開発がインドの支援で成り立っている点について指摘し、一方で、同国のゲーミングコミュニティがオンラインを通じて近隣諸国へと広がっている現状について論述する。