抄録
「あんこスレ」は、匿名掲示板のダイス機能を用いて単独の書き手が物語を即興連載する、2ちゃんねる文化圏自生の遊びの形式である。書き手は選択肢を並べたダイス表を投稿し、サーバ側で生成・公開される出目に従って物語を書き継ぎ、読者は安価(レス番号参照)を通じて間欠的に参加する。本発表はこの形式を固有のデジタルゲームとして分析する。第一に、書き手の側からは改竄できない公開ダイスと偽造不能なレス番号という掲示板の計算機能がこの遊びの成立条件であり、掲示板は物語を掲載する媒体ではなくゲームの実行環境として機能していることを示す。第二に、書き手=プレイヤー、読者=観客を基調とする非対称なプレイ構造を、TRPGおよびソロRPGとの親縁性から記述する。あわせて、ダイス表の極端枠をめぐる慣習の変遷を9作品のパイロット・コーパスから予備的に検討する。以上により、あんこスレを、ゲーム固有の規則実装を持たず汎用計算基盤と共同体慣習との接合によって成立するデジタルゲームの一類型として提示する。