道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
腹腔鏡下に切除した副腎血管腫の1例
和田 秀之大塚 慎也丹羽 弘貴水沼 謙一高橋 亮小室 一輝鈴置 真人平岡 圭岩代 望大原 正範木村 伯子
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 6 巻 1 号 p. 77-81

詳細
抄録

症例は78歳、女性。2019年に腹部単純CTで偶発的に約3cmの右副腎腫瘍を指摘され、以後経過観察されていた。腫瘍は次第に増大し、2022年4月のfollow CTで約5cmとなったため、手術目的に当科紹介となった。自覚症状なく血圧は正常範囲内であり、副腎内分泌検査にて異常所見を認めなかった。腹部超音波検査にて右副腎に54x46mmの類縁形、境界明瞭平滑で内部エコー不均一、一部嚢胞成分を伴う腫瘤を認めた。腹部dynamic CTにて57x46mmの、動脈相で辺縁に強い造影効果を認め、後期相で内部に向かって造影される腫瘤性病変を認めた。非機能性副腎腫瘍と診断したが、概ね6cmと大きくまた増大傾向を示しているため悪性腫瘍を否定できず、腹腔鏡下右副腎摘除術を行う方針とした。手術は左側臥位、4ポートで施行した。術中、肝右葉背側、後腹膜下に表面平滑な右副腎腫瘍を認め、表面の一部は暗紫色で血腫様に見えた。肝右葉を十分に授動した後、右副腎内側を剥離して副腎中心静脈を切離し、その後右副腎の全周を剥離して摘除を完了した。手術時間は1時間49分、出血量は少量であった。経過良好で術後第7病日に退院した。病理組織学的検査において、腫瘤は主にフィブリンを混在する凝血塊であったが、一部に薄い内皮細胞で裏打ちされた大小血管の増生が見られた。また血管内皮細胞マーカーであるCD31, CD34, Factor VIIIを用いた免疫染色で内皮細胞が陽性であったため、海綿状血管腫と診断された。副腎海綿状血管腫は比較的稀な、副腎間質を発生母地とする内分泌非活性腫瘍である。比較的特徴的な画像所見を示すものの、副腎癌との鑑別が困難な場合も多いため、可能な限り積極的に切除し診断を得るべきであり、低侵襲な腹腔鏡手術はその一助となると考えられる。

著者関連情報
© 2023 道南医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top