道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
小腸壊死に対する複数回手術後、肺胞出血をきたした高安動脈炎の1例
水沼 謙一大塚 慎也丹羽 弘貴和田 秀之高橋 亮鈴置 真人平岡 圭小室 一輝岩代 望大原 正範
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2023 年 6 巻 1 号 p. 82-85

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抄録

高安動脈炎は原因不明の非特異的大型血管炎であり、動脈壁の肥厚や硬化をきたす。病変の生じた血管領域により臨床症状が異なるため多彩な臨床症状を呈する。今回、高安動脈炎で加療中に小腸壊死を発症し、複数回の手術治療で救命した後に、肺胞出血をきたした症例を経験したので報告する。症例は60代女性。30年前に高安動脈炎を発症し一旦、寛解状態となっていた。体重減少と食思不振で入院加療中に腹痛が出現し、腹部CT検査でfree airを指摘され当科紹介となった。腸管穿孔を伴う汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行したところ、小腸が広範囲に虚血、壊死に陥っており、小腸切除、ドレナージのみを行った。全身状態が安定した後に小腸虚血部位の追加切除と、回盲部切除、腸管吻合を施行したが、2回目の手術から8日後に、残存小腸の壊死と縫合不全をきたし、緊急的に3回目の手術を行った。小腸切除、空腸人工肛門造設、ドレナージを施行し、救命した。術後、短腸症候群に対して中心静脈栄養法による栄養管理を導入し、退院に向けてリハビリをすすめていたが、3回目の手術から約140日後、発熱、多量の喀血を認め、呼吸状態が急速に増悪した。肺胞出血による呼吸不全の診断で人工呼吸管理下にステロイドパルス療法を行い、時間を要したが最終的に酸素投与が不要な状態までの改善が得られた。高安動脈炎は大血管や冠動脈に病変を有することが多いが、本症例のように上腸間膜動脈領域や肺動静脈への障害は稀であり文献的考察と共に報告する。高安動脈炎の長期的な経過から致死的な病態をきたすこともあり迅速な対応が必要である。

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