道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
排尿ケアチームの活動報告とその成果
細田 一成福崎 純子藤本 奈美筒井 将貴森脇 寛妹尾 誠
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キーワード: 排泄ケアチーム, CAUTI, 教育
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2026 年 9 巻 1 号 p. 27-28

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Abstract

【はじめに】脳神経外科領域においては、脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などの疾患により中枢神経系が障害されることで、排尿機能に多様な影響が生じる。特に、排尿障害は患者のQOL(生活の質)を著しく低下させる要因であり、早期の評価と適切なケアが求められる。しかしながら、排尿障害は症状が多岐にわたり、診断・対応が困難であることから、個別性の高いケアと多職種連携が不可欠である。当院では、平成26年度より排尿ケアの質向上を目的として、医師・看護師・セラピストなどで構成される排尿ケアチーム(以下CST)を立ち上げ、脳神経外科病棟における排尿管理の標準化と患者中心の支援体制の構築に取り組んできた。今回、排尿ケアチームの活動内容とその成果について紹介し、今後の課題と展望を考察する。

【方法】2020年度から2024年度までのCST回診の対象者203名の診療計画書から病名、尿道留置カテーテル挿入人数、尿道留置カテーテル挿入日数、尿路感染率、残尿量を年度別に集計【結果】2020年度から2024年度にかけて尿道カテーテル挿入者数は753名から757名と変化はなかった。尿道カテーテル挿入日数は4,561日から4,082日と減少することが出来た。尿路感染率は12.8%から6.08%と減少した。1,000m l以上の残尿量が確認された患者数は経年的に減少した。【考察】CST担当医が医局の中で排尿ケアに関する勉強会を開催したことやCST看護師が年間2回の排泄に関する勉強会を院内職員へ実施してきたことで、排泄ケアに関する知識が向上したと考える。またCST回診により、対象者への関わりを直接、医師・看護師・セラピストへフィードバックしたことや、排泄成功事例が表面化したことで排尿ケアの意識が高まったのではないかと推察する。今後の課題は、継続的な教育の仕組み作りや排尿ケアの標準化と評価指数の整備であり、排尿ケアチームの拡充と専門性の強化を今後のCST活動の展望としたい。

第78回道南医学会大会医学研究奨励賞推薦演題

【要旨】

函館脳神経外科病院では、2014年から排尿ケアチーム(Continence Support Team:CST)が発足し、2022年度以降医師を含む週1回の回診が定着した。この頃よりチーム全体としてのパフォーマンスが向上し、尿道カテーテル挿入人数、挿入日数、カテーテル関連尿路感染症(Catheter associated urinary tract infection:CAUTI)などの結果から一定の成果が得られた。CSTのこれまでの活動報告とその成果、また今後の課題について報告する。

【はじめに】

脳神経外科領域において、脳卒中や頭部外傷などの疾患により中枢神経系が障害されることで、排尿機能に様々な影響が生じる1)2) 。これら排尿障害は、患者のQOLを著しく低下させる要因になり得るため、早期の評価と適切なケアが極めて重要となる。しかし、排尿障害による症状は多岐にわたり、診断や対応が困難なことが少なくない。加えて、患者ごとに異なる背景や病態が存在するため個別性の高いケアが求められる。このような状況においては、多職種連携が不可欠である。当院では、2014年から排尿ケアチームを立ち上げ活動を行ってきた。チーム活動の成果として一定の成果が見られたので、ここに報告する。

【チーム発足の経緯】

2014年看護師と理学療法士でチーム立ち上げを行った。2016年排尿自立指導料新設の年、医師を含むチームとして活動を開始した。2022年から医師を含む週1回の回診が定着し、2025年から薬剤師を含む多職種チームへと発展し活動している。

【活動内容】

1.勉強会の実施

1)年2回全職員対象の勉強会の実施

2)資格取得医師による、医局内勉強会の実施

2.CST回診

1)排尿日誌の記録から、適切な介入への指導

2)残尿測定のタイミングに対する指導・助言

3)トイレ誘導時間や方法への指導・助言

4)服用薬の副作用確認や新規薬剤の処方

3.CST会議

1)成功事例や難渋事例を共有

4.看護部バランススコアカード(Balanced

Scorecard:BSC)による目標立案

1)各部署のグループ活動の促進

【倫理的配慮】

本研究の実施にあたり、当該施設の倫理委員会の承認を得た。承認番号25−08−02

【データ収集】

1.研究期間:2020年4月~2025年3月

2.対象:当院入院患者

尿道カテーテル挿入人数、挿入日数の合計、平均留置期間、CAUTI、残尿1,000ml以上確認した症例の病名を調査した。CAUTIは尿道カテーテル留置患者の尿培養検査にて細菌検出時陽性とした。

【結果】

① 挿入人数は、2022年度のピーク時980人と比較して2024年度は757人と減少した。

② 挿入日数は、2022年度のピーク時7,104日と比較して2024年度は4,082日と減少した。

③ 平均留置期間は、2022年度のピーク時17.6日と比較して2024年度は13.9日と減少した。

④ CAUTIは、2020年度のピーク時の18.8‰と比較して2024年度は5.7‰と減少した。

⑤ 残尿1,000ml以上確認した対象について、病名は視床出血、小脳出血、脳幹梗塞の患者であった。上記疾患に対し、尿道カテーテル抜去後注意して観察・対応するように働きかけた結果、上記疾患名の患者が残尿1,000ml以上となるケースは2023年度以降0件となった。

【考察】

本研究においては、2022年度に院内感染症クラスターの影響を受け一時的に指標が悪化したものの、2020年度以降の経時的推移では全体として改善傾向が認められた。これは、排尿ケアチームによる継続的な教育活動と多職種協働の介入が、医療従事者の排尿ケアに関する知識の向上を促し、臨床現場での実践に反映された結果と考えられる。先行研究においても、排尿障害に対する体系的な教育とチームアプローチがカテーテル留置期間の短縮やCAUTI発生率の減少に寄与することが報告されており、本研究の結果はこれらの知見と整合するものである。

CST回診では、実際にベッドサイドをラウンドし、排尿日誌や残尿測定を基盤としたアセスメントが実施され、残尿測定のタイミングの指導を要する場面はいまだ多く指導継続中である。排泄誘導のタイミングについて、全体的な水分出納の過不足の評価など、患者の個別性に合わせた関わりについて助言を行なっている。また脳神経外科領域は中枢神経系の障害により下部尿路機能障害を来しやすいため、医師や薬剤師、看護師で情報を共有しながら薬剤の副作用確認や休薬判断を含む包括的な介入が行われた。さらに、失語や認知機能障害、運動麻痺など多様な要因に対してセラピストや担当看護師が助言・訓練を提供することで、患者個別性に応じた排尿自立支援が可能となった。これらの取り組みは、病棟スタッフへの直接的フィードバックを通じて成功体験を蓄積し、ケアの質向上とスタッフの自信形成に寄与したと考えられる。

CST会議における事例共有は、難渋症例に対する新たな視点の獲得や成功事例のポジティブフィードバックを通じて、アセスメント力とリーダーシップの育成に繋がった。病名との関連では、前頭葉・視床・脳幹病変において神経因性膀胱の発生リスクが高いことが知られており3) 、疾患名から予後を予測した観察の強化と早期介入により膀胱過伸展予防に繋がったことは臨床的意義が大きい。

看護部のBSC目標に排尿ケアを組み込むことで、組織的な活動の活性化が促進された。排泄障害は身体的側面のみならず心理社会的側面にも影響を及ぼすことが報告されており4) 本研究で示された改善は患者のQOL維持・向上に資するものである。加えて、本研究の成果は単施設での取り組みに留まらず、今後の標準的な排尿ケアモデルの構築に資する可能性を有している。特に、教育活動・回診・会議といった複数の介入を組み合わせることで、知識の定着と臨床応用が相互に強化される点は重要である。

排泄障害は、「日常生活はもちろんのこと、匂いが気になり人付き合いができなくなったり、自尊感情が低下し抑うつ的になるなど気持ちや感情にも影響を与える」5) と言われている。排泄障害を最小限にすること、また排泄障害がありながらも社会的に自律した生活を送ることができるよう6) チームによるアプローチを継続していく。

【今後の展望】

排尿ケアに関する教育体制の継続的整備が必要。排尿ケアの標準化と評価指数の構築が必要。疾患別にみた排尿障害の追及。今後の展望として、薬剤師を含む多職種連携の拡充は、薬物療法とリハビリテーションを統合した包括的支援を可能とし、患者の安全性と自立度向上に寄与すると考えられる。今後は、退院後の地域生活における排尿ケア支援や、在宅医療・介護との連携を強化することで、再入院予防や長期的なQOL維持に繋げることができると考えている。

【利益相反】

本論文内容に関連する著者の利益相反なし

【参考文献】
 
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