道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
外来看護師と連携した脱毛ケア体制構築の試み
―当院におけるアピアランスケアの第一歩-
中安 一恵北島 智美工藤 陽子松川 亜由美小笠原 ルミ渡邊 貴代畑中 一映
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2026 年 9 巻 1 号 p. 49-51

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Abstract

【はじめに】抗がん剤治療に伴う脱毛は、患者にとって身体的・心理的負担が大きく、治療継続に影響を及ぼすことがある。市立函館病院(以下、当院)では、がん薬物療法件数が年間1万件を超えており、特に乳がん・婦人科がん患者の多くが高度脱毛リスクのある抗がん剤治療を受けている。これまで脱毛に関する情報提供が十分ではなく、患者が不安や混乱を抱えるケースが多く見受けられた。そこで、「脱毛ケアのフローチャート」を作成し外来看護師と支援体制を構築したので、報告する。

【活動の概要】抗がん剤の脱毛リスク分類(日本がんサポーティブケア学会 2021)に則り、「脱毛ケアのフローチャート」を作成し、2024年9月より乳腺・婦人科外来と共有した。医師から初回治療やレジメン変更の説明に続けて、外来看護師から脱毛時期やケア方法について情報提供を行った。また、該当患者の入院にあたっては、がん薬物療法看護認定看護師(以下、認定看護師)と情報共有を行い、認定看護師が病室に訪問して患者や家族からの要望に対応した。

【成果】支援体制の整備により、脱毛リスクに応じた情報を治療開始前から提供でき、乳がん・婦人科がん初回治療患者全員への介入が可能となった。また、外来看護師と認定看護師の連携により、脱毛ケアに加え、治療に伴う不安へのケアなど、多面的な支援が実現した。

【考察】外来看護師と密に連携し、フローチャートを共有することで、治療開始前からの支援が可能となった。アピアランスケアは、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を、医学的、整容的、心理社会的な様々な支援を用いて軽減するケアである。脱毛だからと単にウイッグを勧めるのではなく、患者の気がかりや大切にしていることに耳を傾け、 苦痛の本質を理解することが重要であるといえる。今後は構築した支援体制について、患者の声を収集し、より個別性の高いケアの提供を目指してきたい。

第78回道南医学会大会道南医学会ジャーナル推薦演題

【要旨】

抗がん剤治療に伴う脱毛は、患者にとって身体的・心理的負担が大きく、治療継続に影響を及ぼす重要な課題である。当院では、外来看護師と協働し、脱毛リスク分類に基づく「脱毛ケアフローチャート」を作成し、治療開始前からの支援体制を整備した。運用開始後は、脱毛リスクに応じた情報提供を治療開始前からでき、乳がん・婦人科がんの初回治療患者全員への介入が可能となった。本稿では、その取り組みの概要と得られた成果について報告する。

【はじめに】

近年、がん医療の進歩により患者の生存期間が延長し、通院治療の環境整備が進んだことで、働くがん患者が増加している。こうした中で、がん患者が社会的な役割を担いながら治療生活を送るためには、治療に伴う外見の変化が患者の心理社会的側面に与える影響を十分に考慮したケアが、これまで以上に求められる。

市立函館病院(以下、当院)では、がん薬物療法件数が年間1万件を超え、特に乳がん・婦人科がん患者の多くが高度脱毛リスクのある抗がん剤治療を受けている。がん治療に伴う外見の変化は急激に生じることから、身体的、心理的、社会的に困難を感じやすく、特に女性は社会的な活動にも影響を与え、社会的孤立を生じるともいわれている1) 。しかし、当院では、これまで脱毛に関する情報提供が十分ではなく、患者が不安や混乱を抱えるケースが多く見受けられた。そこで、「脱毛ケアのフローチャート」を作成し外来看護師と支援体制を構築したので、報告する。

【活動の概要】

抗がん剤の脱毛リスク分類(日本がんサポーティブケア学会 2021)に則り2) 、「脱毛ケアのフローチャート」を作成し、2024年9月より乳腺・婦人科がん患者対象に運用を開始した(図1。医師から初回治療やレジメン変更の説明に続けて、外来看護師が脱毛時期やセルフケア方法について情報提供を行った(図2。また、該当患者の入院にあたっては、がん薬物療法看護認定看護師(以下、認定看護師)と情報共有を行い、認定看護師が病室に訪問して患者や家族からの要望に対応した。

【成果】

支援体制の整備により、脱毛リスクに応じた情報を治療開始前から提供できるようになり、2024年9月から2025年9月の1年間で乳がん・婦人科がんの初回治療患者38名に介入した。対象患者の診断名別と患者数は1に示す。

高度脱毛リスク患者は治療前からウィッグや帽子に関する情報を得ることができた。一方、中程度・軽度リスク患者は脱毛への誤解を防ぎ、不必要な準備を避けることができた。また、外来看護師と認定看護師の連携により、外来看護師が脱毛ケアを治療前支援として主体的に取り組むことができた。さらに、認定看護師は脱毛ケアに加え、治療に伴う不安へのケアなど、専門性を活かした多面的な支援が実現した。

【考察】

外来看護師と密に連携し、フローチャートを共有することで、治療開始前からの支援が可能となった。米国のがん化学療法ガイドライン(Oncology Nursing Society 2014)では、外見の変化として脱毛を生じる患者には、まず脱毛に関して患者の認識を把握し、治療前に患者に適切な情報を提供し、外見変化に対するコントロール感を高めるという、治療前教育の重要性を示している3) 。よって、がん治療が開始する前の脱毛ケアは、患者の治療準備を整え、セルフケアを高めるために有用であると考える。

また、脱毛だからと単にウィッグを勧めるのではなく、患者の気がかりや大切にしていることに耳を傾け、苦痛の背景や意味を理解する姿勢が重要である。看護師が、外見変化の体験や辛さや他人の反応への戸惑いやそのつらさといった患者の心理状況を理解することが情報提供の際に大事である4) 。アピアランスケアは、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を、医学的、整容的、心理社会的な様々な支援を用いて軽減するケアである5) 。ウィッグは患者が「その人らしく」生活するための一手段にすぎない。外来看護師との連携により、治療開始前からの切れ目のない支援が実現したことは、アピアランスケアの第一歩として意義があると考えられた。

【今後の課題】

本取り組みにより、治療開始前からの切れ目のない脱毛ケア支援が実現し継続的な支援体制を構築することができた。一方で、患者の心理的変化や満足度を評価できていない点は本取り組みの限界である。今後も患者の声を反映しながら支援内容を改善し、他診療科へも支援を広げることで、すべての初回治療患者に対して包括的な支援を提供できる体制を目指していきたい。当院が重視する意思決定支援の視点を踏まえ、「自分らしさ」を尊重した生活支援を実現するために、多職種と協働し、患者・家族の力を引き出す支援を継続的に展開していきたい。

【利益相反】

本論文内容に関連する著者の利益相反なし

表1 :対象患者の診断名別と患者数

図1 :脱毛ケアのフローチャート

図2 :抗がん剤治療による脱毛ケアの情報提供用紙(一部)

【文献】
 
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