抄録
各種の低,高銅型アマルガムの微細構造におよぼすアロイ練和時間の影響を光学顕微鏡的に観察した。微細構造,とくに内蔵されている練和や充填不充分による空隙,と前報で述べた物理的性質との間には明らかな関連性がみられた。練和時間の影響を大きく受けたのはアロイ粒子形状については球状型よりも削片状型の方が,また,アロイ組成については低銅型よりも高銅型の方に著しかった。従って,削片状粒子を有する高銅型アロイにおいては特に製造者の指示に従って入念に練和する必要のあることが確認された。また,粒状,組成の近似したアロイ間でも被練和性のよしあしが微細構造の面からもみられ,アロイ粒子の表面性状の相違が水銀とのなじみに関係していることが推察された。さらに,練和時間を延長して前述の欠陥を除去しようとすることは,アロイの種類によっては他の重要な性質,たとえば充填可能時間の短縮や硬化時の収縮の増大,に悪影響を与えるので練和時間は実用面でのバランスの上から決められるべきものであることがわかった。