抄録
70mass% Co-30% Cr合金の3つの異なる表面状態(バフ研磨したまま,300°Cと500°Cで大気中で酸化)に対する接着性レジン(4-META添加)の接着性について検討した。合金の表面構造はESCAと反射電子回析で解析し,接着性と表面構造の関係について接着モデルを仮定して論じた。
接着性は,研磨したままの方が300°Cと500°Cで酸化したものより優れていた。この接着性の優劣は,液体チッ素を用いた熱サイクルを施すことによって見出された。
研磨したままの表面構造は,20∼30Åの非晶質の不働態被膜で,Cr3+やCo2+またはCo3+を中心にして-OHやH2Oが6配位で結合していると考えられた。また,300°Cの場合は,120Åの酸化被膜が形成され,その表層は,主にCo3O4から成っている。酸化層の表面には数分子のH2Oが吸着していると考えられ,この吸着水の存在が,研磨したままの表面よりも接着性を低下させた原因と考えられた。