抄録
床義歯装着時におこりうる床下粘膜組織にみられる弊害をできるだけ軽減し,粘膜の生理機能を自然状態に保持できるような床用材料TRUTISSUを試作し,いくつかの基礎実験を行なうとともにモニターによる臨床観察をも行ない,以下のような評価を得た。1. TRUTISSUの成形性はよく,成形後の適合性は良好であった。2.口蓋粘膜に対する床の吸接着維持については他の材料とくらべて同等の維持力が示された。3.生物学的適合性についてはTRUTISSUの構成金属線上に対して良好な細胞の接着ぬれを示し,何らの変性も認められなかった。また,口蓋粘膜をシミュレートした人工粘膜上の細胞についてTRUTISSU直下の細胞は正常な増殖を示した。4.コバルト・クロム床やレジン床との比較について,装着感,温度感および嗜好品に対する味覚などについて高い評価が得られ他の床用材料にはみられない特長が示された。
以上,いくつかの基礎実験と臨床観察との結果を考え合わせると,今後さらに改良すべきいくつかの点を残しているとはいえTRUTISSUは床用材料として有用な材料であることが理解できた。
