抄録
フィナステリドの高齢者における体内動態について検討した。フィナステリドの5mg単回経口投与後の血漿中未変化体濃度推移は高齢者および非高齢者間で類似していた.高齢者におけるCmax(39.7ng/ml)およびAUC0-∞(267ng·hr/ml)は,非高齢者のそれら(44.7ng/mlおよび318ng·hr/ml)に比してやや低い値を示したが,有意差は認められなかった.また,Tmax,MRTおよびt1/2などのパラメータについても両群で有意差は認められなかった.尿中代謝物であるM-1(ω-ヒドロキシフィナステリド)およびM-3(フィナステリドω-カルボン酸体)についても排泄率を求めた.全例でM-1は定量限界以下であったが,M-3の排泄率は高齢者で投与量の26.8%,非高齢者で23.1%とほぼ同等であり,有意差は認められなかった.以上のように,高齢者および非高齢者におけるフィナステリドの単回経口投与後の体内動態は類似しており,加齢の影響は受けないものと考えられる.