抄録
新規抗アレルギー薬 (Z)-11-[(3-Dimethylamino)propylidene]-6,11-dihydro-dibenz[b,e]oxepin-2-acetic acid hydrochloride(KW-4679)の体内動態を検討するために高感度定量法であるRIA法を確立し,これを用い,ラット,モルモット,イヌおよびサルにおける KW-4679 の体内動態を比較した.
1.家兎より得られた KW-4679 の抗血清は,ラットおよびイヌにおける血漿中代謝物であるモノ脱メチル体(M1)およびジ脱メチル体(M2)とそれぞれ,27 および 4% の交差反応性を示した.しかしながら,RIA 法での測定値は HPLC 法で単離後測定した未変化体の血漿中濃度と良く相関していた.各種動物血漿中において本 RIA 法は 0.1-2ng/ml の濃度範囲で良好な再現性を示し,定量限界は 0.1ng/ml であった.
2.KW-4679 を静脈内投与後,血漿中 KW-4679 はいずれの動物種においても三相性に消失した.全身クリアランス(Cl)はラットおよびモルモットでは 1.31-1.45 1/hr/kg とほぼ同様であったが,イヌおよびサルでは,それぞれ 0.32 および 0.73 1/hr/kg と低値を示した.この時のラット,イヌおよびサルにおける KW-4679 の尿中排泄率は 43.1,62.1 および 50.1% であった.ラット,サルにおいては尿中への排泄に糸球体濾過のみならず,尿細管分泌の関与が考えられた.
3.KW-4679 をラット(0.3-3mg/kg),モルモット(1-10mg/kg)およびイヌ(0/3-3mg/kg)に経口投与すると KW-4679 は速やかに吸収された.最高値を示した後二相性に消失した.生物学的利用率は 60.8-83.3% であった.これらの動物種では消失相の半減期も 5.8-10.6 時間とほぼ一定値を示した.今回検討した投与量範囲では,いずれの動物種においても,その体内動態は線形であった.サル(1mg/kg)では他の動物種に比較し,やや吸収が遅かったが,生物学的利用率は約100%であった.
4.各動物種における in vitro 血清中非結合型分率は 33.3-52.7% であり,0.1-1000ng/ml において一定であった.
5.KW-4679 の全身クリアランスおよび尿中排泄クリアランスは各動物種の体重と良好なallometricな関係を示した.