抄録
自立歩行の可能な高齢者が利用するシルバーカーの使いやすさや安全性は,ユーザが歩行中にハンドグリップを押す力や,ハンドグリップ高やホイールベース長,さらに路面の傾斜角や摩擦係数などの環境に依存している.高齢化の進む現在の社会において,高齢者の自立歩行を支援して,生活の質を高めるシルバーカーのような補助具の重要性がますます高まると考えられるが,その使いやすさや安全性をバイオメカニズムの視点から考察した研究は少ない.本稿では,シルバーカーに作用する力の分析,シルバーカーとユーザとのインタラクション,環境とヒューマンファクタを考慮した最短ホイールベース長に焦点をあてて,安全で快適な外出を実現するためのシルバーカーのバイオメカニズムについて解説する.