1996 年 11 巻 2 号 p. 160-177
14C-RIPM-ACをラットおよびイヌに経口投与したときの吸収,分布,代謝,排泄について検討し,以下の知見を得た.
1.雄性ラットに30mg/kgを経口投与した際,血液中放射能濃度は投与後30分にCmaxを示し,消化管からの吸収は速やかであった.消化管内投与試験から主に小腸上部において吸収され,排泄試験の結果より消化管からの吸収率は50%以上であった.絶食処置によりRIPM-ACの吸収に及ぼす摂餌の影響は少なかった.血漿中代謝物の濃度推移についてみると,RIPM-ACはいずれの時点においても認められず,RIPM-ACは消化管内で代謝を受け,抗菌活性本体であるRIPMは投与後30分にCmaxを示したのち経時的に減少した.
2.臓器・組織内放射能分布は腎臓,膀胱および消化管で高く,他の臓器・組織は血漿中放射能濃度の71%以下であった.微生物学的定量法によりRIPM濃度を測定したところ,投与後30分までの血漿および腎臓には検出されたが,肺および肝臓には検出されなかった.血漿蛋白結合率は投与後30分で55%であったが,その後は経時的に上昇し,これに伴って非可逆的に結合している放射能の割合も増加した.臓器・組織からの放射能の消失は白色脂肪,中枢神経系,甲状腺,副腎,脾臓,胸腺,骨格筋,骨髄および褐色脂肪において緩慢であった.
3.雄性ラットに30mg/kgを経口投与した際の尿,糞および呼気中への排泄は投与後48時間までにほぼ終了し,120時間までの尿中に投与量の47.7%,糞中に40.6%,呼気中に7.1%が排泄された.投与後48時間までの胆汁中には投与量の1.2%が排泄されたにすぎなかった.尿中代謝物についてみると,投与後4時間までに排泄された放射能の50%以上がRIPMであった.
4.雄性ラットにおいて10mg/kgから100mg/kgの投与量間ではRIPM-ACの体内動態には用量相関性が認められた.また性差は少なかった.
5.RIPM-ACの吸収後における体内動態においてラットおよびイヌとの間には種差があるものと考えられる.