薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)のファーマコキネティクス―体内動態における受容体介在性クリアランスの寄与―
桑原 隆小林 智杉山 雄一
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1996 年 11 巻 2 号 p. 194-208

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抄録

受容体介在性エンドサイトーシスは,生理活性ペプチドの体内動態においてもっとも重要な機構の一つである.今回,造血因子の一つであるヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のファーマコキネティクスについてまとめ,その体内動態における受容体介在性の役割について考察した.G-CSFとしては現在,CHO細胞を宿主とし糖鎖を有するもの,大腸菌を宿主とし糖鎖を有しないもの,およびN末端のアミノ酸配列を改変したmutant G-CSFの3種が上市されている.これらのG-CSFの体内動態は糖鎖の有無,アミノ酸配列の改変にかかわらず非線形性を示す.すなわち実験動物およびヒトにおいてG-CSFの投与量の増量に伴う全身クリアランスの減少,および反復投与によるクリアランスの増加が認められる.体内動態の解析の結果,G-CSFの体内動態に飽和性クリアランスと非飽和性クリアランスの関与が明らかとなった.また皮下投与時の生物学的利用率は約60%である.糖鎖の体内動態に与える影響はそれほど大きなものではないが,糖鎖末端のシアル酸残基の負電荷により全身クリアランスおよび皮下からの吸収に差が認められる.また飽和性クリアランスのメカニズムについては臨床的に末梢血好中球数と全身クリアランスが相関することも報告されていることから,G-CSFレセプターがその飽和性クリアランスに関与することが考えられる.実際,mutant G-CSFを用いた研究により骨髄中のG-CSFレセプターがG-CSFのこの飽和性クリアランスに関与していること,その全身クリアランスへの寄与は低投与量では80%程度であることが明らかとなった.一方,腎障害ラットにおいて全身クリアランスが低下することなどから,高投与量において主に寄与する非飽和性クリアランスの主機構の1つとして腎における糸球体濾過の関与が明らかとなった.

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