1998 年 13 巻 2 号 p. 61-77
ラットに14C標識したSM-5887を単回静脈内投与したときの体内動態について検討し,以下の結果を得た.基本投与量は10mg/kgとし,血漿,血球中放射能濃度測定群では0.1および1mg/kgの投与量についても検討した.
1.血漿および血球中の放射能濃度は投与直後では速やかに減少し,投与後24時間から168時間までの間は緩やかに減少して三相性の推移を示した.血球中では血漿中の約1/2~1/3の濃度であった.0.1~10mg/kgの投与量範囲において,AUCについて良好な投与量相関性が認められた.
2.血漿および血球中のSM-5887濃度は投与直後では放射能と同様に速やかに減少し,消失相(γ相)では放射能よりも速やかに減少した.血球中では血漿中の約1/2の濃度であった.血漿中SM-5887濃度のα,βおよびγ相の半減期はそれぞれ1.8分,29分および1,9時間であった.
3.側鎖カルボニル基が還元された活性代謝物SM-5887-13-OHの血漿および血球濃度は投与直後に最高に達し,その後緩やかに減少した.また,血球中では血漿中より3倍以上高濃度であった.その他の代謝物としてアグリコソ代謝物(MetA,MetBおよびMetC)が血漿または血球中に検出された.
4.組織中放射能は投与後1~4時間において骨髄,消化管壁,皮膚,副腎,脾臓,肺,ハーダー氏腺,顎下腺,腎臓および肝臓に高濃度で分布した.組織中放射能は顎下腺,精巣,胸腺,および被毛を除き,血漿中レベルと平行に減少した.
5.尿中および糞中には投与後168時間までにそれぞれ投与放射能の13%および76%が排泄された.胆汁中には投与後72時間までに投与放射能の58%が排泄された.また,体外に排泄された胆汁を再度十二指腸内に注入した場合,注入放射能の31%が吸収された.
6.雌性ラットにおける血中(血漿,血球)放射能濃度推移,血漿中代謝物組成,組織中放射能濃度および尿糞中排泄率は雄性ラットの場合とほぼ同様であり,雌雄差は認められなかった.
7.ラット血漿,ヒト血漿および4%ヒト血清アルブミソ溶液におけるSM-5887のin vitro蛋白結合率は92~97%,代謝物SM-5887-13-OHのin vitro蛋白結合率は78~93%であった.SM-5887投与時のラットのin vivo蛋白結合率は,SM-5887では93~96%,代謝物SM-5887-13-OHでは82~89%であった.