薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
新規抗癌剤塩酸アムルビシン(SM-5887)の体内動態(第2報): ラットにおける反復静脈内投与時の体内動態
仲井 俊司赤尾 恭子伊藤 正樹金丸 博中塚 巌
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1998 年 13 巻 2 号 p. 78-90

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抄録

ラットに14C標識したSM-5887を1mg/kg/dayで1日1回14日間反復静脈内投与したときの体内動態について検討し,以下の結果を得た.
1.反復投与期間中の血漿,血球中放射能濃度は投与回数とともに増加する傾向がみられ,14回投与時の投与後24時間では各濃度は単回投与時の6~8倍に増加し,AUC0-168hは単回投与時の約5倍に増加した.このような濃度増加は単回投与時の放射能濃度推移から予測されるものであった.
2.反復投与時の血漿および血球中SM-5887および代謝物(SM-5887-13-OH,Met AおよびMet C)の濃度は,単回投与時とほぼ同レベルであった.
3.反復投与時の組織中放射能濃度は最終投与後1~4時間に最高値を示し,顎下腺,ハーダー氏腺,肝臓,腎臓,副腎,脳下垂体で高く,単回投与時と同様の分布を示した.多くの組織において放射能の消失は緩やかであったが特に顎下腺,精巣,被毛で緩やかであった.顎下腺,精巣,被毛で反復投与による放射能濃度の増加率が高かった.
4.反復投与時の組織中のSM-5887濃度は顎下腺,脾臓,肺,胸腺,骨髄で高く,消失は比較的速やかであった.組織中の代謝物としてSM-5887-13-OHが顎下腺,胸腺,副腎で高濃度に,MetBがハーダー氏腺,顎下腺,副腎,腎臓で高濃度に認められた.その他Met A,Met CおよびMet Dが認められ,有機層に抽出されない高極性代謝物と推測される放射能画分の比率が,血漿,肝臓および膀胱で高かった.
5.反復投与時の尿,糞中放射能排泄率は,最終投与後168時間までにそれぞれ累積投与量の14.2%および79.6%であり,単回投与時の尿,糞中放射能排泄率とほぼ同様であった.

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