薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
14C-Benidipine・HClのラットにおける吸収,分布および排泄
小林 弘幸大石 孝義西家 弘佳小林 智井上 顕信平田 正
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1990 年 5 巻 1 号 p. 71-86

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抄録
ラットに14C-KW-3049を単回経口および静脈内投与,あるいは反復経口投与したときの吸収,分布および排泄について検討した.また,非標識体の反復経口投与後の血漿中濃度推移についても検討し,以下の結果を得た.
1.消化管からの吸収は雌雄ラットとも速やかであった.
2.経口投与後の血漿中放射能濃度は,雌雄ラットとも投与後0.5時間に最高濃度(雄性:126.4ng equiv./ml,雌性:246.6ngequiv./ml)を示した後,2~3相性に消失した.消失相の半減期は,雄性ラットにおいて20.3時間,雌性ラットにおいては30.0時間であった。
3.雄性ラットに静脈内投与後0.1時間における放射能の組織内分布は,肝臓で最も高く,ついで副腎,腎臓肺の順であった.中枢神経系への移行は少なかった.
4.雌雄ラットに経口投与後の放射能濃度は,大部分の組織において投与後0.5時間に最大となった.雄性ラットにおいては肝臓で最も高く,ついでリンパ節,腎臓の順であった.中枢神経系への放射能の移行は極めて少ないものであった.雌性ラットにおいては肝臓で最も高く,ついで腎臓リンパ節の順であった.雄性ラット同様中枢神経系への移行は極めて少なかった.
5.雄性ラットに経口投与後作製した全身ARGの所見では,肝臓腎臓,副腎,顎下腺,肺,脳下垂体,膵臓の順に放射能の移行が認められた.
6.ヒトおよび各種実験動物の血漿ないし血清に対するin vitroにおける蛋白結合率は,99%以上と高いものであった.静脈内投与後0.1時間および雄性あるいは雌性ラットに経口投与後1時間における放射能のin vivo蛋白結合率は,それぞれ95.2,84.0,78.3%であった.
7.雄性ラットに静脈内投与したとき,放射能は尿中に約18%,糞中に約84%が排泄された.経口投与後では尿中に約19%,糞中に約74%が排泄された.雌性ラットに経口投与後では尿中に約24%,糞中に約72%が排泄された.
8.静脈内および経口投与後の放射能の胆汁への排泄率は,それぞれ約79%および約34%であった.
9.非標識体を1日1回21日間反復投与しても血漿中動態に変化は認められなかった.
10.標識体を1日1回21日間反復投与すると,血漿中放射能濃度は,投与14日まで上昇し,それ以降定常状態に達した.組織内濃度も単回投与後と比較すると2~3倍高い放射能濃度を示した.最終投与後72時間までに,投与放射能の約6%が尿中に,約88%が糞中に排泄された.
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