薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
6-Amidino-2-naphthyl 4-[(4,5-dihydro-1H-imidazol-2-yl)amino]benzoate dimethanesulfonate (FUT-187)の体内動態に関する研究(第1報):単回投与時のラットにおける吸収,分布および排泄
小松 信三畔取 政行岩本 里美杉山 哲資渋谷 正興川口 安郎
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1992 年 7 巻 2 号 p. 145-165

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抄録

FUT-187の体内動態を明らかにするために,14Cで標識した2種類の14C-FUT-187,すなわち[14C-IABA]FUT-187および[14C-AN]FUT-187を用い,ラットに経口投与あるいは静脈内投与したときの吸収,分布および排泄について検討した.
1.[14C-IABA]FUT-187あるいは[14C-AN]FUT-187 1,10,30および100mg/kg経口投与時の全血中放射能濃度は,全体的に[14C-AN]FUT-187投与群で高かった.1mg/kg静脈内投与では,逆に[14C-IABA]FUT-187投与で高濃度を示した.また,全血中放射能分離分析の結果,未変化体は約1.0%であった.
2.両標識体30mg/kg経口投与時の全血中放射能濃度推移に性差は認められなかった.
3.両標識体30mg/kg経口投与時の組織内放射能濃度は,血液中放射能濃度推移を反映し,[14C-AN]FUT-187投与で高濃度であった.両標識体投与群とも肝,腎に高い濃度が認められたが,血液中濃度の低下と共に速やかに消失し,24時間で放射能はほとんど認められなかった.
4,妊娠18日目のラットに両標識体を30mg/kg経口投与したとき,いずれの場合にも胎仔への放射能の移行は少なかった.
5.両標識体を1,10,30および100mg/kg経口投与したとぎ,放射能は24時間までに尿,糞中にほとんど排泄され,96時間ではほぼ100%の累積排泄率であった.しかしながら,主排泄経路は標識部位によって異なり,[14C-IABA]FUT-187では糞中であった.一方,[14C-AN]FUT-187では尿中であった.
6.30mg/kg経口投与時の胆汁中への放射能の排泄率は,[14C-IABA]FUT-187では極めて少なかったが,[14C-AN]FUT-187投与群では24時間までに5.2%排泄され,若干の腸肝循環が認められた.
7.両標識体を30mg/kg経口投与したときの乳汁中濃度は,血液中濃度より低かった.
8.血清蛋白結合率は低値を示し,親和性(K値)も小さかった.

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