薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
ロイコトリエン拮抗剤ONO-1078の体内動態(第1報): ラットに単回投与後の吸収,分布および排泄
石堂 雅恒柴川 公雄中尾 康裕澤田 正文愛下 秀毅
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1993 年 8 巻 1 号 p. 3-26

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抄録

ラットにONO-1078(4-oxo-8-[4-(4-phenylbutoxy)benzoylamino]-2-(tetrazol-5-yl)-4H-1-benzopyran hemihydrate)を単回経口あるいは静脈内投与したときの吸収,分布および排泄について検討した.
1.雄ラットにONO-1078を20あるいは200mg/kg経口投与したとき,血漿中未変化体濃度から求めたAUC0-∞およびCmaxは用量をあげると増加したが,用量比よりも低い増加であった.
2.雌雄ラットに3H-ONO-1078を0.2,2および20mg/kg経口投与したときの血漿中放射能濃度推移から求めたAUC0-∞およびCmaxは用量をあげると増加したが,用量比よりも低い増加であった.
3.雌雄ラットに14Cあるいは3H-ONO-1078を2mg/kg経口投与したときの血漿中放射能濃度のAUC0-∞から静脈内投与時のAUC0-∞をもとにして求めたbioavailabilityは,14C-ONO-1078で雌雄それぞれ6%および4%,3H-ONO-1078でそれぞれ12%および10%であった.
4.ONO-1078は十二指腸から大腸上部までの幅広い範囲で吸収されることが認められた.また,リンパ吸収実験から消化管から吸収されたONO-1078の約20%がリンパ経路,約80%は門脈経路によるものと推測された.
5.14C-ONO-1078を2mg/kg経口投与したとき,放射能は投与後3時間に肝臓や腎臓などの主要な組織で最高値を示したのち,速やかに消失し,24時間には多くの組織で検出できなくなった.また,雌雄差は認められなかった.脳や生殖器を含むいずれの組織も,血漿と同じかそれ以下の濃度で推移し,胎仔移行および乳汁移行も認められなかった.
3H-ONO-1078を2mg/kg経口投与したとき,放射能は肝臓,腎臓,心臓などの主要な組織では投与後6時間に,白色脂肪や褐色脂肪では投与後72時間に最高濃度に達し,その後ゆるやかに減少したが,投与後336時間でも大部分の臓器および組織で放射能が検出された.雌雄差は認められなかった.胎仔移行および乳汁移行が認められた.
6.14C-ONO-1078を2mg/kg経口投与したとき,雄では投与後24時間までに尿および糞にそれぞれ3.3%および86.8%,雌ではそれぞれ4.4%および83.2%が排泄された.投与後72時間までの糞尿中への総排泄率は雄で104.4%,雌で101.4%であった.
3H-ONO-1078を2mg/kg経口投与したとき,雄では投与後24時間までに尿および糞にそれぞれ1.1%および90.4%,雌ではそれぞれ1.0%および80.0%が排泄された.投与後168時間までの糞尿中への総排泄率は雄で99.0%,雌で93.6%であった.
7.14C-ONO-1078を2mg/kg経口投与後6時間までに胆汁中へ雌雄それぞれ投与量の0.1%および0.2%が排泄され,48時間までの総排泄率ぱそれぞれ0.9%および1.3%であった.
3H-ONO-1078を2mg/kg経口投与後6時間までに胆汁中へ雌雄それぞれ投与量の0.9%および1.2%が排泄され,48時間までの総排泄率はそれぞれ10.3%および11.9%であった.
8.ラットに3H-ONO-1078を2mg/kg経口投与後24時間までに排泄された胆汁を受容ラットの十二指腸へ注入し,胆汁および尿へ回収された放射能から求めた再吸収率は雄で77.2%,雌で46.8%であった.
9.以上のように,14C-ONO-1078と3H-ONO-1078の体内動態に差が認められ,3H-ONO-1078では体内からの消失がゆるやかであったが,毒性試験において異常所見が認められないことから,毒性に関係しないものと考えられる.

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