抄録
塩酸キナプリルのラットの薬物動態について14C標識化合物を用いて検討した.塩酸キナプリルは主として小腸から吸収された.絶食条件下で雄ラットに3mg/kg経口投与したときの吸収率は50~65%と推定された.血漿中放射能濃度は投与後0.5時間で最高濃度に達し,最終相の消失半減期は29.6時間であった.最高濃度(Cmax)および血漿中濃度一時間曲線下面積(AUC)は1mg/kgから30mg/kgの範囲で投与量にほぼ比例して増加した.飽食条件下ではCm謎は低下したが,AUCは変化しなかった.また,薬物動態値に性差はみられなかった.投与後0.5時間の組織内放射能濃度は肝臓,血漿,腎臓,血液および肺が高かった.その後,組織内放射能濃度は速やかに減少し,投与後72時間では肺,肝臓および腎臓にのみわずかに放射能が検出された.全身オートラジオグラムにおいて同様の分布傾向が認められた.投与後120時間の体内に残存する放射能は投与量の0.1%にすぎなかった。投与後0.5~6時間における血漿中放射能の蛋白結合率は95~97%であった.血球への放射能の移行は少なかった.血漿,尿,糞および胆汁中には主として活性代謝物であるキナプリラートが検出され,キナプリルおよびその他の代謝物はほとんど検出されなかった.雄ラットに3mg/kg経口投与すると,120時間以内の尿中に投与量の18.8%,糞中に78.6%が排泄された.雌ラットの排泄率は雄ラットに類似していた.経口投与後48時間以内の雄ラットの胆汁中に投与量の43%が排泄され,更に胆汁中放射能の22%が腸管から再吸収された.