2021 年 31 巻 p. 226-231
2015年に私立大学の定員管理の厳格化が通知されてから,東京23区の私立大学でトリクルダウン現象が生じている可能性がある。本研究は事例研究の対象校(A大学)のデータを新たに追加して,トリクルダウン現象が生じている可能性について追試的な検証を行った。その結果,A大学では私立大学の定員管理の厳格化以降,入学者に占める高校ランク上位校出身者の構成比が大きくなっており,そうした変化を受けて入学者の学力が統計的に有意に上昇していることが明らかになった。また,A大学の一般・センター入試志願者数が多い高校によっては受験指導や高校生の志願動向が変化している事例があることも分かった。これらの知見はトリクルダウン現象が生起していることを示している。