2021 年 31 巻 p. 35-42
文部科学省の大学入学者選抜改革では全入試区分における多面的・総合的な評価が求められている。本研究では,一般選抜での多面的・総合的評価の実行可能性を探るべく調査書記述の自動処理を試みた。具体的には調査書の自由記述に対し,別の教師データ(判断基準を獲得するための情報)を与えて機械学習させ,調査書の記述内容を自動分類する仕組みを実証した。検証として,平成30年度入学者の入学時アンケート(回答者2,698名)を因子分析とクラスター分析で4つのタイプに分類したものを教師データとし,調査書の裏面記述データ(1,393名分)の60%を機械学習させ,残り40%を含め判定させたところ,4タイプの成功率はそれぞれ99%, 77%, 74%, 66%となった。本研究の判定は完全ではないものの高確率で分類できる結果も得られたことから,調査書が電子化されることで一般選抜の限られた期間で全志願者に対し多面的・総合的な評価を実現させる可能性を示唆したといえよう。