本稿では,名古屋大学の志願者アンケートを用いて,1人当たりの県民所得に基づき各都道府県を所得上位地域,所得中位地域,所得下位地域と東海3県の4つの地域に分類し,各地域の出願に関わる意思決定の特徴について考察した。分析の結果,所得下位地域では,難関私立大学への併願が少なく,相対的に難関国立大学への志向が強いことが示唆された。また,所得下位地域では学校推薦型選抜への出願に高校教員の助言が強い影響を持つことが示された。さらに,高校教員の影響は所得下位地域における合格者において特に強いことから,この地域の教員が受験生の資質をよく理解した上で,学校推薦型選抜に関する進路指導をしている可能性が示唆された。