本稿は,学力を基準とした日本の教育選抜システムが高校生の職業期待に影響を与える背景から,大学入試に注目し,大学生の職業期待との関連を検討した。分析の結果,相対的に難易度の高くない大学で,一般入試にくらべ推薦入試(他)を経た学生の職業期待は低いことがわかった。意欲や適性といった一元的な学力以外の基準を取り入れる推薦入試(他)で変化した大学入試は,学校歴に集約されない職業選択の分岐性をいくらかもつといえる。ただ,本稿のデータは調査会社に登録された大学生への「予備調査」である。そのため,結果の一般化は控えなければならない。今後,大学生を対象に無作為抽出で得られた全国データを用いることができたなら,改めて本稿のテーマを検討したい。