抄録
2年前から慢性腎不全の内科的治療を継続していたFIV感染猫が腹部膨満と元気食欲の消失を主訴に来院した。腹部レントゲン検査と超音波検査で肝後縁に巨大なシスト状の腫瘤が確認された。血液および血液化学検査では、慢性腎不全に関連した所見を除くと異常は認められなかった。腹部正中切開で開腹すると肝臓内側左葉に発生した巨大なシストが認められた。このシストは暗赤色で内部に多量に液体が貯留し、壁面には大豆大から拇指頭大の小腫瘤が散在して認められた。シストは肝葉切除により摘出し、病理組織検査で胆管癌を伴った嚢胞性胆管腺腫と診断された。症例は、手術から23カ月後に慢性腎不全の悪化のため安楽死が行われたが、この間肝機能検査に異常は認められなかった。病理解剖で肝臓に嚢胞性胆管腺腫の散発が認められたが、胆管癌の再発は認められなかった。