抄録
特発性腸リンパ管拡張症と診断された2頭の犬について報告する。体重減少や慢性下痢などの臨床症状および重度な汎低蛋白血症から特発性腸リンパ管拡張症が示唆されたが、診断につながる所見が得られなかったので確定診断を得るために組織学的検索が必要となった。空腸の全層切除生検結果から、特発性腸リンパ管拡張症と診断された。特発性腸リンパ管拡張症は、病態の初期段階に診断された場合は、完全寛解は得られなくても高い治療効果が期待できる。症例1は症状がとても重度で、病態がかなり進行してから診断されたため治療効果が低く、外科的生検後7日目に死亡した。症例2は、病態が症例1に比較してより早期の段階で診断されたため治療効果が得られたが、外科的生検後501日目に死亡した。これらのことから、確定診断法としての外科的生検は、特に病態の重度な動物にとっては侵襲度が高い手段であるが、できるだけ病態の初期段階に行うことが特発性腸リンパ管拡張症の治療においては重要であると思われた。