動物臨床医学
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犬の僧帽弁閉鎖不全症による慢性心不全に対するβ遮断薬(メトプロロール)の有効性の検討
小林 正行星 克一郎平尾 秀博清水 美希島村 俊介田中 綾山根 義久
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2005 年 14 巻 2 号 p. 51-57

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抄録
犬の僧帽弁閉鎖不全症(MR)による慢性心不全(CHF)に対するβ遮断薬の有効性と安全性を評価する目的で,β遮断薬治療を行ったMR犬26症例を対象とし遡及的検討を行った。投与開始時のNew York Heart Association (NYHA)の心機能分類はII度が10例,III度またはIV度が16例で,ジゴキシン,ACE阻害薬,利尿薬を含む標準的な心不全治療が行われていた。β遮断薬(酒石酸メトプロロール)は,0.5mg/kg/dayから開始,目標投与量2.0mg/kg/dayに漸増された。投与前の臨床症状,胸部X線検査,心臓超音波検査によるデータと投与後のデータと比較した。投与1カ月,3カ月,および6カ月後で,それぞれ40.0%,45.0%,30.8%の症例でNYHAの改善が認められた。心拍数および左室短縮率は低下傾向を示したが,左室前負荷に増大は認められなかった。胸部X線検査上では心拡大傾向が認められたが,心室壁厚は維持され心拡張は抑制されていた。投与直後に9症例(34.6%)に副作用が認められ,その発生は重症例ほど多い傾向にあった。以上の結果から,導入時の心不全増悪に注意が必要であるものの,従来の標準的な心不全治療に加えβ遮断薬を併用することは,犬のMRによるCHFに対して有効である可能性が示唆された。
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© 2005 動物臨床医学会
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