2006 年 15 巻 3 号 p. 85-89
著しい斜頚と起立困難を呈し,頭部MRI検査で右小脳橋角部に腫瘍組織を認めた6歳齢のシェトランド・シープドッグに対し,腫瘍摘出術を試みた。まず後頭骨を開頭し,右横静脈洞を露出させ,これをボーンワックスで閉鎖した後に,開頭範囲を右側頭骨方向に拡大した。小脳上の硬膜を切開すると小脳実質を突き破った腫瘍組織が確認でき,その周辺の小脳実質を鈍性に分離しながら腫瘍組織を摘出した。摘出組織の病理組織学的検索では,脈絡叢乳頭腫と診断された。術後のMRI検査では,腫瘍組織の減体積は確認できたが,腫瘍組織の頭側の一部は残存していた。しかし動物の臨床症状は著しく改善し,斜頸は残るものの自力歩行などの一般生活が可能になった。動物は術後22カ月まで良好な状態を維持できたが,腫瘍の再増殖による臨床症状を再発し,25カ月後に死亡した。