2006 年 15 巻 3 号 p. 79-83
猫の下部尿路疾患(FLUTD)は,発症原因が多岐にわたるなどの問題点から,治療方針の確立が難しく,完治が困難な疾病の一つと考えられている。また,細菌感染の有無の判定も難しく,培養検査法の確実性が求められている。そこで,本研究では,FLUTDの症状を呈し来院した猫の尿について,普通培養法と,血液培養用のカルチャーボトルを用いた増菌培養法を行い,細菌の検出率を比較することで,普通培養法で見逃されている細菌性尿路感染症の症例の存在について検討した。その結果,普通培養法では細菌の検出率は26.3%であったが,増菌培養法では75.0%の高い検出率を示した。また,同一尿を用いて同様の検査を行った結果でも,普通培養法の検出率は20.0%であったが,増菌培養法は80.0%であった。以上の結果より,普通培養法は高率に偽陰性の結果をもたらし,治療指針に大きな障害をもたらす可能性が示唆された。