1985年と1990年,1995年,2000年,2005年のそれぞれの年に,東京都およびそれに隣接する埼玉県,千葉県,神奈川県の諸地域,とくに市街地において,路上に放置されていた犬のものと考えられる糞便を50検体ずつ採取し,寄生虫の検査を行った。その結果,原虫ではコクシジウム類のオーシスト,条虫ではマンソン裂頭条虫の虫卵と瓜実条虫の片節,線虫では猫糞線虫と犬鉤虫,犬小回虫,犬回虫,犬鞭虫のそれぞれの虫卵が検出された。これらの寄生虫の検出率は年の経過とともに低下を示したが,瓜実条虫と犬回虫のように比較的高い検出率が保たれているものもあり,路上に犬の糞便を放置すると寄生虫の感染源となる可能性があることが示された。