2007 年 16 巻 1 号 p. 11-14
1年前から排便困難が続いているとの主訴で11歳の雌の柴犬が来院した。各種検査により腹腔内後方に巨大な腫瘤を認め,外科的摘出を試みた。腹壁を開くと,当該腫瘤は尿道,尿管,膀胱および子宮断端部に癒着していたが,そこで癒着部位を注意深く分離したところ,直腸壁から発生していることが明らかになった。腫瘤は腸管壁とともに切除され,病理組織学的検査で,直腸原発の平滑筋腫と診断された。術後,一時的な排尿障害をきたし急性腎不全の症状を呈したが,その後しばらくして自力排尿が可能となった。現在もしぶりの状態は続いているものの,抗生物質と低残渣食の給与により維持されている。