2010 年 19 巻 1 号 p. 9-13
犬の後頭骨形成不全症候群(COMS)は,人のキアリI型奇形に類似した疾患であり,近年のMRI検査の普及によりその病態が解明されつつある。痙攣発作,斜頸,姿勢反応の低下などの神経症状を示した犬30頭に対しMRI検査を実施したところ,小脳の尾側変位・圧迫像,延髄・頸髄境界部背側のくも膜下腔の狭窄・閉塞像,同領域における脊髄の折れ曲がり像,脳室の拡張,脊髄空洞症など,COMSにみられる画像所見が認められた。これらの症状は様々であり,画像上COMSの所見を複数認める場合でも,症状が軽微なものもあり,画像所見と神経症状を関連づけることは困難であった。 しかしながらMRI検査を実施することで COMSに関連する異常所見の有無や程度を知ることは,正確な責任病変の特定と治療計画を立てる上でも必要であると考えられた。