動物臨床医学
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症例報告
猫の犬糸状虫症の2例
和田 優子山根 剛髙島 一昭山根 義久
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2016 年 25 巻 4 号 p. 132-138

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抄録

鳥取県西部に位置する米子動物医療センターにおいて,犬糸状虫症を呈した猫の2例に遭遇した。症例1は,1週間前より嘔吐,前日からの努力性呼吸を主訴に来院した。初診時の犬糸状虫抗原陰性および各種検査より肺炎と診断し,抗菌剤などの対症療法により改善した。しかしながら第348病日に初診時と同様の症状を呈し,再度犬糸状虫抗原検査を実施したところ陽性を示した。ステロイドを含む対症療法にて状態は改善したが,その約1週間後に突然死した。 症例2は,他院にて胸水貯留が認められ,心不全として治療を受けていたが改善がないとの主訴で来院した。犬糸状虫抗原陽性,心臓超音波検査において右心房から右心室にかけて犬糸状虫虫体を疑う所見と三尖弁逆流が認められ,大静脈症候群(CS)と診断した。左頸静脈よりストリングブラシを用いて雌成虫3隻を摘出した。術後の経過は良好であり,現在は定期的な検診および犬糸状虫予防を実施している。猫の犬糸状虫症は臨床の場で身近に遭遇する可能性のある疾病である。しかしながら,その確定診断は困難な場合も多い。各種検査を総合的に判断し,確定診断が得られない場合でも犬糸状虫症を考慮し,インフォームドコンセント,治療ならびに定期検査や予防を行うことが重要であると考えられた。

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