動物臨床医学
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原著
人と動物の未来センター・アミティエ受け入れ犬猫の健康調査に基づく鳥取県内における保護犬猫の健康実態
川﨑 美苗髙島 一昭小笠原 淳子水谷 雄一郎陶山 雄一郎山根 剛山根 義久
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キーワード: 譲渡, 健康状態, 保護犬猫
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2018 年 27 巻 1 号 p. 18-28

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抄録

動物保護施設「人と動物の未来センター・アミティエ」では,鳥取県内の保護犬猫を受け入れ健康管理等を実施後,譲渡を行っている。保護犬猫の健康状態に関する統計的データは乏しくその実態は不明である。そのため,鳥取県内における保護犬猫の健康状態把握の一助とすべく,アミティエにて受け入れた保護犬90頭,保護猫112頭の健康診断結果を基に,各種疾病の罹患率とその内容および転帰について検討した。その結果,受け入れ犬猫の各々73.3%と54.5%に治療を要する疾患が認められ,犬猫ともに消化管内寄生虫関連疾患の罹患率(25.7%)が高かった。また,犬では犬糸状虫症(32.0%)およびそれに続発する心疾患の罹患,猫ではウイルス性疾患の潜伏感染(8.9%)などにより,譲渡後も継続的に治療あるいは経過観察が必要であった個体が約40%認められた。受け入れから譲渡までのアミティエにおける飼養期間中央値は,体重10kg未満の犬および1歳未満の幼猫で有意に短かった。個体の性別や譲渡時健康状態による差は認められず,全体の半数が受け入れから約3~4カ月で譲渡されていた。全国的にみても保護犬猫の譲渡活動に獣医師が主体的に関与している例は少なく,本調査のように保護犬猫の健康状態を詳しく調査した報告例は筆者の調べる限り認められない。しかしながら,本調査の結果を鑑みると動物福祉の向上のためにも,保護犬猫の健康管理および譲渡先での適切な飼養・衛生管理方法の普及啓発活動において,獣医師が積極的に関与していく必要があることが示唆された。

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