動物臨床医学
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症例報告
全抜歯処置により糖尿病における血糖コントロールが改善した猫の1例
佐橋 悠佐橋 三和子中東 礼子北野 優香里日笠 喜朗
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キーワード: , 糖尿病, 歯周病治療
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2021 年 30 巻 4 号 p. 103-106

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抄録

症例は,雑種猫,避妊雌,推定7歳,体重4.8 kg。糖尿病でインスリン治療を行っていた。左側下顎腹側および口唇の腫脹および食欲低下を主訴に来院した。口腔内検査で4本の犬歯の挺出と歯預部における軽度から中程度の歯垢・歯石付着と歯肉の中程度の腫脹・発赤が認められ,挺出にともなう歯周病と診断して全抜歯処置を提案した。しかし,当初飼い主が希望しなかったため,抗生剤による治療を開始した。抗生剤の投与後,下顎の腫脹は改善したが,食欲不振は改善されず,体重は減少した。そこで,第90病日に全身麻酔下で全抜歯を実施した。処置後,食欲は改善し,体重は増加した。空腹時血糖値およびフルクトサミンは低下していた。第570病日現在,食事の嗜好性に問題はあるが食欲は安定し,血糖コントロールが良好に維持されている。本例は歯周病巣からの炎症性サイトカインの産生がインスリン抵抗性を増大させ,血糖コントロールを難しくしていたと考えられ,抜歯処置により血糖コントロールが改善した。本症例では歯周病治療が糖尿病治療の一助になった。

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