2021 年 30 巻 4 号 p. 111-113
犬のマダニ駆除薬として用いられているスポットオン式滴下投与用液剤の有効成分は,犬の体表に均等に分布するとは限らず,様々な部位における分布濃度に濃淡が生じるものと考えられる。本研究は,殺ダニ用液剤のマダニへの直接の塗布がその駆除のための補助的な方法として有用であることを確認するために実施した。マダニの自然感染を受けている犬30頭を供し,それらの犬に寄生していたマダニ計122個体の背面に対して,フルメトリンのプアオン式滴下投与用液剤をマダニ1個体あたり製剤として5 μl(有効成分として50 μg)の用量で直接的に塗布した。また,各々の犬に寄生していたマダニのうち2個体は無投薬対照とした。マダニの寄生状況を投薬の3時間後,6時間後,12時間後,24時間後に観察したところ,薬剤を塗布していない対照のマダニでは24時間の観察期間中に駆除された個体はなかったが,薬剤を塗布したマダニは全個体が3時間後または12時間後までに駆除された。また,供試犬のいずれにも有害事象は観察されなかった。以上のことから,この薬剤のマダニへの直接の塗布は,スポットオン式滴下投与用液剤によるマダニ駆除に際して,補助的に用いることができると結論した。