動物臨床医学
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原著
猫のワクチン接種と慢性腎臓病および予後に関する回顧的調査
水谷 雄一郎髙島 一昭髙島 久恵小笠原 淳子山根 剛山根 義久
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2023 年 32 巻 1 号 p. 11-

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抄録

猫のワクチン接種の頻度と慢性腎臓病(CKD)および予後との関連について回顧的に調査した。ワクチンの製造に猫の腎臓由来の細胞が用いられていることが確認できた,8種類のワクチンを接種している猫を対象とした。ワクチン接種の頻度により,未接種群,低頻度接種群(平均3年以上の間隔で接種),高頻度接種群(1~2年に1回の頻度で接種)の3群に分類した。CKDの発症年齢は未接種群15.4±3.3歳,低頻度接種群14.2±3.1歳,高頻度接種群13.6±2.7歳であり,全体では14.1±3.0歳であった。CKDの発症年齢に有意差は認めなかった。CKDの発症率は,未接種群22.6 %,低頻度接種群32.5 %,高頻度接種群49.0 %であり,全体では36.7 %であった。ワクチン接種の頻度が高い群ほどCKDの発症率は高く,未接種群と高頻度接種群のオッズ比は3.29(95 %信頼区間:1.61‒6.73,p<0.01),低頻度接種群と高頻度接種群のオッズ比は1.99(95 %信頼区間:1.08‒3.68,p<0.05)であった。以上の結果から,ワクチン接種は猫のCKD発症のリスク因子である可能性が示唆された。

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